富本温泉(ふもとおんせん)

【交通】
 車:山形自動車道山形北ICより国道13号線を村山方面へ走り、
    県道25、300、国道347を挟んで再び県道300と進んでいく。
    県道沿いに小さな看板が出ているので、それを見逃さないように。
    「ここを曲がるのか?」と思うほど細い道で、特に冬場は完全に1車線、
    対向車が来たら、すれ違いが出来ない道を延々と進むと到着する。
    ICからは約30KM。駐車スペース問題なし。

    マピオンでの周辺地図

【共同浴場】
 なし。下記の「富本館」で立ち寄り入浴が出来る。

【宿泊施設】
 1軒「富本館」

 @富本館
    山形県村山市大字湯野沢2651    0237-54-2636
    立ち寄り入浴時間は未確認だが、他にお客さんがいなければ、
    入れてくれるように思える。事前に電話してから訪ねることをおすすめする。
    500円。

【泉質等】
 アルカリ性単純泉。源泉温度は29.7度。pHは9.7。
 ツルツル感が強く、肌にまとわりつくようなお湯。無色透明無味無臭。

【効能】
 神経痛、筋肉痛、疲労回復など。

【風呂の様子】
 脱衣所のみ男女別になっており、中はほぼ混浴。
 浴槽は2つあるので、途中でアコーディオンカーテンで仕切ることが出来る。
 1つは完全に源泉のみの掛流し、1つは加熱したお湯が注がれる。


この冬、日本海側は大雪に見舞われました。
富本温泉までの最後の道は本当に狭く、雪の壁を両側に見ながら、
対向車が来たらどうしようかと、ヒヤヒヤしながらの運転でした。
そんな道の奥にあるというのに、木造とはいえ大きな建物です。
この温泉の源泉名は「湯野沢温泉」というのですが、
富本温泉で通っているようなので、そちらの名前で紹介します。

 

年季を感じさせるとはいえ、立派な建物です。
長い廊下の片方に部屋が並ぶ、昔ながらの形式の宿です。
左の写真は、客室のある2階の廊下。
右は1階の廊下で、突き当りが浴室になっています。

 

浴室は不思議な造りです。脱衣所は男女別ですが、浴室は一緒です。
この2つの浴槽の中心にアコーディオンカーテンが引けるようになっており、
必要な時はそれを引いて、男女を分けているようです。
右は源泉槽、左は加熱槽。加熱槽には、熱く沸かしたお湯が出る蛇口があり、
宿の人が適当にお湯を足したりして、温度調節をしています。
ツルツル感の強いお湯で、加熱槽と源泉槽と交互に入ると、本当に気持ちいい。
冬場は源泉槽だけだとちょっと寒いのですが、加熱槽と交互に入っているうちに、
本当に体の芯まで温まり、夜はぐっすりと眠れました。

 

わかりにくいかも知れませんが、手前の溝にお湯が溢れています。
これはあがり湯に使ったり、体を洗うのに使ったりします。
こちらも源泉掛流し状態。常に溢れています。
新鮮なお湯を、まさに湯水のごとく使うことが出来るなんて、
本当に贅沢な話です。

 

このお湯は浴室だけではなく、駐車スペース前にある池にも使われています。
魚を飼育しているのです。触ってみたら、ほんのりと温かかった。
山の湧き水と半々にして利用しているそうなのですが、
普通の水で少し薄めないと、アルカリが強い温泉なので、
魚の鱗などがみな溶けてしまうのだそうです。
いいお湯ではありますが、ずっと水中にいる魚にとっては、恐ろしいお湯ですね。
この強いアルカリのせいで細菌も繁殖できないのだとか。
それでも「やっぱり清掃が一番大事」と宿の人はおっしゃっていました。
泉質に甘えることなく、きちんと管理しているようで、好感が持てました。

 

夕食には、なんと宿の人が捕ってきたという鴨の鍋でした。
その他には茸ご飯やブリ大根、マスのおつくりなど、
一見質素だけれど、とても美味しい食事でした。

 

普通の温泉宿に慣れた人には少々ハードルが高いでしょう。
宿は古くて、トイレはまだ汲み取りだったりします。お風呂も近代的なものとはいえません。
1階は宿の人の居住スペースでもあるので、生活感に満ちています。
色々な意味で、昔ながらの田舎の宿なのです。
でも私にとっては、いい意味で忘れられない宿の1つとなりそうです。

私がお風呂に行く気配を感じると、すぐに加熱槽にお湯を足してくれたり、湯加減を聞いてきます。
部屋の床の間には、とてもきれいな生花が飾ってありました。
夕食時には部屋に宿の人がやってきて、鍋の鴨について説明してくれました。
お湯のことを聞くと、満面の笑顔で色々とお話してくれました。

うまく言えないけれど、私をもてなそうという気持ち、できる限りの歓迎をしてくれているのだというのが、
色々な場面、ぎこちない接客からとても強く伝わってきたのです。
洗練された近代的な接客、スマートなサービスを望む人には、この宿は絶対に向かないと思うし、
そういう人には行って欲しくないというのが、正直な気持ちです。
本当に温泉というのはお湯だけではなく、それを取り巻く環境によって印象が変わるものです。
ホスピタリティというものについて、改めて考えさせられた貴重な1泊となりました。

 

【最終訪問】
 2006年1月

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