フンベ海岸温泉(ふんべかいがんおんせん)

【交通】
 車:道央自動車道登別東ICより国道36号線に出て登別温泉駅付近。
    紹介しているくせに、今回はあえて詳しい場所は書きません。
    最近ゴミの放置など、マナーを守らない利用者が増えてしまったとのことで
    閉鎖の恐れもあるということなのです。

    行きたい方は地元の人に聞いたりして探してください。
    くれぐれもマナーを守った入浴をお願いします。

【共同浴場】
 ここ1軒。無料開放、時間の制約は特になし。
 しかし周囲には街灯などの灯は全くなく、道も舗装されているわけでもなく
 柵はあれども崖っぷち。夜は危険だと思う。

【宿泊施設】
 なし。

【泉質等】
 効能書きなし、不明。かすかな緑色で濁っており、お湯から匂いは感じないが
 口に含んで飲む時に何となく金属っぽい匂いを感じるような気がする。
 お湯に入ってじっとしていると体中に細かい気泡が沢山付着するが
 炭酸の味は感じられない。ツルツルでもヌルヌルでもない感触。
 温度は40度前後のぬるめのもの。

【効能】
 泉質表なし、不明。

【風呂の様子】
 低めの山を背にした断崖に建つ小さな湯小屋。言葉は悪いが、ぼろっちい。
 トタンで造られていて、あちこち錆びている。漁師の番小屋が古くなったような感じ。
 浴槽も浴室も脱衣所も1つ、全くの混浴。洗面器が数個、飲泉用のコップが置いてある。
 浴槽は4〜5人はなんとか入れるくらいの大きさ。掛流し。


 子供の頃熱心に読んだ本の1つに松谷みよ子の「日本の伝説」があります。
 今でも愛読していますが、昔の日本に暮らした人々の様子が生き生きと描かれていて
 何度読んでも泣き、笑い、そして心躍らされました。
 アイヌの民話もいくつか載っており、その中にイタチの神様が活躍する話があります。
 住民を悩ませていた大鯨ショキナを、普段は間抜けなイタチの神様が退治する話ですが
 その時神様が切り落としたショキナの頭がフンベ山という山になったと伝えられているそうです。
 フンベ海岸温泉の名前を聞いた時「もしや」と思いましたが、やはりこの伝説の地で
 海岸近くの小さな山がそのフンベ山だったのです。
 なんだかその話を読んだ子供時代のことを思い出して、なんともいえない嬉しい気持ちになりました。
 ちなみにフンベとはアイヌ語で「鯨」のことです。


 崖っぷちに建つ小さな湯小屋。周囲に何もない、荒涼とさえいえる場所です。
 ある場所に車を停め、少し歩くと小さな湯小屋が見えてきます。
 入り口のドアを開け、中に入ると後でドアがバタン!とすごい勢いで閉まってびっくり。
 実はドアの内側に滑車と連動させた大きな石がくくりつけられており
 勝手に閉まるようになっているのです。海の近くなので、風で勝手にドアが開いてしまうのでしょう。


 中にはすでに数人の地元の先客。あがったばかりらしく、椅子に腰掛けて汗をふいていました。
 「どこから来たの?」「いいお湯だよ」「遠くから来たんなら、折角だから入っていったほうがいいよ」と
 熱心にお湯を薦めてくれました。地方のお湯をまわっていると排他的なところにあたることもありますが
 それはそれで仕方がないものだと思っていました(こっちが勝手に行っているわけですから)。
 それだけにここの人たちの親切な態度は、とっても嬉しかったです。
 湯小屋は確かにぼろですが、お湯は本当に素晴らしいものでした。
 ぬるめのお湯が掛流し。加水も加熱もされていない、純粋な温泉です。
 体中に細かい気泡が沢山付着して、徐々に体がぽかぽかしてきます。
 濁ったお湯の中に鉄と思われる赤い湯の花が舞っていました。
 窓の外には、空と海が見えました。


 この湯小屋を探して周辺をうろうろしていた時、草を摘んでいたお婆さんが居たので声をかけて
 「この写真の温泉を探して居るんですが、ご存知ないですか?」と聞いてみたところ
 「このあたりには、もうないんじゃないのかねえ」
 「昔はこの海岸には、こんなのがあちこちにあったけどね」との返事が返ってきました。
 実際湯小屋はあったわけなのですが、昔はもっと沢山あったのですね。
 今1軒だけ残っているこの湯小屋も、いつまで存続できるのかわかりません。
 ぜひとも残って欲しいものです。
 今でも「いいお湯だよ」「入っていきなよ」と声をかけてくれたお爺さんの
 穏やかな笑顔を思い出します。

【最終訪問】
 2004年4月

HOMEへ>>北海道一覧へ