温泉療法だけに頼ってはいけない


「湯治」というのは読んで字のごとく、お湯で治療することです。
昔は湯治は一般的で、病気になったり怪我をしたりすると、
温泉へ出かけていき、逗留して治療に専念しました。
農閑期に疲労を癒したり、温泉を楽しみとしてだけではなく
健康面からも有効に活用していたのです。
現在でも湯治の宿というのは全国にありますが、
本当に病気の人だけを専門に逗留させているのは、ごくわずかです。

「湯でたこの温泉めぐり」でも、それぞれの温泉の主な効能を書いてはいますが、
その温泉を活用するだけで病気が治るわけではありません。
効能欄を見るとわかりますが、似通ったものが多いですね。
筋肉痛、神経痛、虚弱児童などなど・・・。
これらは体を温めたり、温泉で静養したりすることで改善が望めるというもので、
完全にそれが治ることを保証したものではないと考えていただきたいのです。

一口に神経痛、筋肉痛と言っても、原因がはっきりしているものと、していないものがあります。
たとえば椎間板ヘルニアで下肢に神経痛を来たしている場合。
これは、ヘルニアを治療しなければ、治らないものです。
原因不明の腰痛などは、温泉で静養して温めれば改善することもあるでしょうが、
原因のはっきりしているものは、医者へ行くに限ります。
温泉療法は補助的なもの、気休め程度に考えるべきで、
温泉だけに頼って治そうとしてはいけない、と湯でたこは考えます。
また、慢性関節リウマチなどの場合は、非可逆性の疾患ですので完治は困難。
このような疾患の場合は、原疾患からくる関節痛などの症状を温泉で緩和する、と考えるといいと思います。
それから皮膚病などは、皮膚が直接温泉と触れ合うわけですので、治療効果が望めることもあるでしょう。
実際、アトピー性皮膚炎の患者が改善したり、疥癬や水虫の治療に硫黄が効果的だったりします。

しかし、それでも病気の場合は、まず第一に医者に行くべきです。温泉は補助治療です。
治療方法を選択するのは本人ですので、何が何でも温泉で!という人を止めるつもりはないですが。
「でも昔の人は、温泉で治していたのでしょう?」という意見もあるでしょうが、
昔の人は医者にかかれないから温泉へ行ったのです。それしかなかったのです。
今ほど医師が多くない時代、お大尽様しか医者にかかれない時代だったのです。
以前、蔵前仁一さん(雑誌「旅行人」編集長)の旅行記で、興味深い記述がありました。
ある国を蔵前さんたちが旅していて、現地の人が野草を治療に使っているのを見ます。
生活の知恵だなあと感心するのですが、その夜、テントに昼間の現地人が訪ねてきて、
「頭痛がするので、アスピリンがあったらくれないか」と言うのです。
彼らが野草を治療に使っているのは、それしか薬となるものがないからであって、
頭痛に確実に効果のあるアスピリンがあれば、アスピリンを使いたいのです。
昔の人も同様ではないでしょうか。いい医者がいてお金があれば、
温泉ではなく、医者にかかりたいのだと。

勿論西洋医学が万全なものとは言い切れないでしょう。
実際に「子宝の湯」と言われる温泉に通って、赤ちゃんを授かった人も多く居ると聞きます。
科学が解明しきれないものがまだまだこの世には多くあるのは確かではありますが・・・。
温泉療法を否定するわけではありませんが、妄信するのは危険だとは思います。
治療の選択は、あくまでも自分の責任で。
個人個人病態は異なるものですので、医者と連携をとって、
自分にとって最も効果的な治療方法を選んでください。

 

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